価値も意味もない神を信じる神父様。

「誓いますか?」

誓おうと誓うまいと、何も変わらないでしょう?

「誓います」

言葉くらいならいくらでも。

 

煌びやかなシャンデリア。

テーブルに並ぶ豪華な食物。

意味の無いものの元で、意味の無い誓いをたて、何がそんなに嬉しいのか。

夫となった侯爵様に皿を差し出され、私は軽く頭を下げ、お礼を言って受け取った。

不意に襲ってきた吐気に眩暈がする。

 

あぁ…私も食べねば生きていけないのだ。

あらゆるものを犠牲にしなければ生きていけないのだ。

あの少年を殺したのも、この魚を殺したのも、あの果実をもぎ取ったのも、総て私なのだ。

あれだけ傲慢な人間に呆れながら、その私も間違いなく傲慢な人なのだ。

そして、路頭に迷っている子供たちとは比べ物にならない、夥しい数のものを犠牲にしているのだ。

私は侯爵様に微笑み返し、心で慟哭した。