「姫様、朝のお祈りの時間です」
ステンドグラスが美しい聖堂の、赤いベルベット上で手を重ねる。
指を折り倒して、目を閉じる。
暗唱するは昨日と同じ、神への祈り。
この世に神がいるのならば、なぜこの世はこんなにも歪なのだろうか。
我々を救うことをしない、救うことのできない神を祈り、称える意味はあるのだろうか。
「かくあらせたまえ」
神を信じることで、人は獣からヒトになったと言う。
それは…幸福なことなのか。
神を信じぬ獣は不幸なのか。
「姫様、朝食のスープはどうなさいますか?本日は上等な牛を焙りましたので、人参とコーンのスープがぴったりかと」
獣を飼育し、口にすることでその存在を見下しているだけだ。
死んだら己も獣の糧になるというに。
傲慢さにも気付かない。
「えぇ…そうします」
それほど人は偉いのか。
人を創った神は、ヒトに何を求めたのか。
「…私室に運んで頂けますか?」