「アイデンティティ」 ―buried―

 

アンドロイドはにっこりという表現が相応しい笑顔を作りました。

「こんにちは」

アンドロイドは同じ顔を作り、同じように言いました。

「こんにちわ」

「ようやく初期化されて、明日から隣の国で働くことになりました」

アンドロイドは嬉しそうな顔を作っていました。

「よかったですね」

「はい。事故で、片足と両親を失くした女の子の養育を担当します。本当に、楽しみです」

 

僕は不良品になりかけていた。

どれだけ大量のアンドロイドが整然と並んでいても、君だけは見分けられると、思っていた。

君の「個性」を見つけていた。

今の君じゃあ、例えすぐ隣に立っていても、君だなんて解らないよ…。