8.「何よりも大切なもの」
決まってる、自分自身。
だって、自分以上に大切なものなんて、思いつかない。
「愛する人のためなら」なんて、馬鹿馬鹿しい理想論を言えるほど、もう子供じゃない。
そういう子を見ると、どこまでも優しい口調で、「指を一本切り落としてから出直しなさい」って鋭利なものを渡したくなるわ。
「2番目は」とか、ふざけたことを言うつもりも無いの。
すべては自分との利害関係。
自分にとって利益となるのなら、恋人だって裏切るわ。
そういうものでしょ?
恋人だって、「愛情」とか言う、形のないものをやり取りする、言っちゃえばビジネスパートナーでしょ?
貰うだけ、与えるだけ、なんて関係は絶対に成り立たないわ。
一緒にいる時間、恋人という名のアクセサリー的な価値、そういうものを代価にしてるだけ。
無償の愛なんて、存在しないの。
別に見返りも気にせず、無償でやってあげることもある?
そういうときはね、自分の評判とかプライド、人の目を買ってるの。
もしくは、その話し合いで揉める面倒を避ける権利とかね。
すべてはビジネスと同じ、形があるかないかって違いがあるだけの、取引なのよ。
私にはまったく理解できないけど、「情」だとか「義理」だとかって大々的に掲げる自分の信念は、ただのエゴだしね。
大事なのは自分の損得。
血も涙も無いって言う?
でもね、ビジネスだから、私は絶対に手を抜かないわよ。
自分が満足した分だけ、相手にも満足させる。
それ以上でも、以下でも無いわ。
どれだけ低いコストと少ない労力で先方を満足させるかが、パートナー選びと私の手腕にかかってるの。
満足させるって言うのが、私の主観に偏ってたらビジネスは成立しない。
必ず相手が満足しないと。
そうして初めて、好意的な友好関係が築けるの。
私は人を評価するとき、ルックスも財産も評判も、同じように価値あるものとして計算する。
もちろん、性格とか個性もね。
最低だって言う?
でもね、どこまでも平等よ。
表面だけでも、裏面だけでも無い。
その人を出来得る限り知ろうと努力して、手にした知識をファイリングして、評価する。
何様って言う?
でもね、口に出さなければ、とても扱い易い人間だと思うわよ。
ギブアンドテイクをよく知っていて、気紛れなんて起こさない。
笑うかしら。
これが私なりの平等。
笑うかしら。
これが私なりの博愛。
だって、自分が1番大切だもの。
1番以外は、みんな同じレベルよ。