14.「全てが終わったら。」

 

全てが終わったら、目を覚ますつもりです。

それまでは、息を殺して眠ります。

表面からは決して見えない木の根のように。

ふと、そこにあることを忘れる空のように。

ただそこに在るだけの存在になります。

私はチカラを持たないから。

どれだけ叫んでも、この声は届かない。

縋りつくこの手は、全てを通り抜け。

私に気づくものはいない。

どうすることもできない。

 

…こんなはずじゃなかった。

楽しい夢が悪夢となったのはいつ?

全ての生き物が苦しみもがく世界で。

全ての生き物が傷つけ合う世界で。

全ての生き物が泣き腫らす世界で。

…こんなはずじゃなかった。

愛と幸福に溢れた夢はどこに?

苦しまなければ生きていけないこの世界で。

なにかを傷つけなければ生きていけないこの世界で。

泣いても救われず、それでも泣かずにおれないこの世界で。

 

私の涙は豪雨となる。

私の怒は迅雷となる。

私の嘆は激震となる。

それは、悲しみと憎しみを増やすだけ。

無力な私。

だから、全てが終わるまで横たわります。

泣かぬように目を消し、

怒らぬように耳を捨て、

嘆かぬように口を溶かして。

 

全ては私の夢なのに。

夢は私のもとから離れ。

怒りを喰らい憎しみを嚥下し涙を啜って。

膨張し続ける。

はち切れ張り裂け滅裂するまで、

私は無力に無情に眠ります。

 

 

こうして神は名だけとなった。