11.「すれ違う想い。」
君の笑顔が好きになった。
君が大切だと感じた。
だけど―
あなたの笑顔が好きになった。
あなたが大切だと感じた。
だから、あなたを守りたいと思った。
だから、強くなりたいと思った。
だから、努力をした。
君は人に暴力を振るうようになった。
君の目は強く雄々しく、人を射抜くようになった。
信念を持って人を殴る君は、兇器になった。
私は君に恐怖した。
あなたは笑わなくなった。
あなたは僕を避けるようになった。
だから、あなたを惹きつけたいと思った。
だから、魅力的になりたいと思った。
だから、努力をした。
君は愛想よく笑うようになった。
君の目は薄く濁り、人を浅く見るようになった。
誰にでも広く浅く笑う君は、酷薄になった。
私は君に憮然とした。
あなたは僕を軽蔑するようになった。
あなたは僕を失望の目で見るようになった。
だから、あなたを知りたいと思った。
だから、賢くなりたいと思った。
だから、努力をした。
君は勉励に尽くすようになった。
君の目は鋭く激しく、人を見下すようになった。
偏った知識を身につけた君は、高慢になった。
私は君に同情した。
あなたは苦しそうに泣くようになった。
あなたは僕を憐れむようになった。
だから、僕はただ、あなたのそばにいたいと思った。
だから、あなただけを見ることにした。
なのに……
君が私のそばにいるようになって、私はやっと気が付いた。
君が見ていたのは私だった。
君を狂わせたのは私だった。
ごめん、ごめんね…
あなたは、ただ僕に謝りつづけて、僕を見なくなった。
私は、何を見ていたのだろう。
努力は報われると教えてくれたのは、他の誰でもない、あなただったのに。
一生懸命頑張る君が好きだと言ったのは、他の誰でもない、私だったのに。